フォトエッセイ

熊本からやってきたクマ

最近、我が家で犬を飼い始めた。

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川に初めて入ったクマ。


最近、我が家で犬を飼い始めた。名前はクマ。
足がとても短くてとても太く、そして胴がこれまた長い、ミニチュアダックスフンドのオス。
一緒に暮らし始めて約2ヶ月たったいま、もういなくてはならない存在。
いまではクマ中心に時間が回っている。クマ、クマ、クマ、クマ、クマ・・・

今年のGW、水俣と熊本市動物愛護センターの撮影のため、熊本の実家に帰省していた。
実家には5匹の犬、妹宅は3匹の犬を飼っている、犬だらけ一家。
だから実家に帰るとそれなりに忙しい。散歩やブラッシングやトイレの掃除などなど。
そして犬たちが、人間の愛を求めてじっと見つめてくる。
「ハイハイ、わかったからわかったから・・・」
と抱きしめたり、おやつをあげたりし、犬とのコミュニケーションをとるのが日課の、実家での生活。

そして私の妹は、旦那さんや姉に協力してもらい、殺処分寸前の犬を引き取って新しい里親を探すボランティアまで始めた。
妹のボランティア日記(細くてもながーく続けて欲しい!)

子供が3人いて仕事までしているのにすごかね~・・・と遠い東京から思っていた。
帰省中のGW、仕事で手一杯の妹たちが私に
「○○保健所まで犬ば引き取りに行ってくれんど? 保健所で預かっとる期限が切れて、もう殺処分されてしまう子がおるとよね。小型犬だけん、探せば里親が見つかると思うとたいね。よかね?」
という訳で、私は旦那さんと二人で保健所まで車を走らせた。
保健所に到着し、担当の方のあとを追い犬舎に着くと、
「どこどこ?え?ここ?」
犬舎とは思えないほどの分厚い扉。厳重な鍵を開け、扉を押す職員の方。
窓もない真っ暗な中に、扉の隙間から太陽の光が犬舎に差し込む。
檻がいくつかあり、4匹の犬がそれぞれの檻に分けて入れてあった。吠える犬、怯える犬、威嚇する犬、そしてじっと動かずこちらを見る犬。
それがクマとの初対面だった。
「この子ですね」と職員の方が指を指すが、吠えもせず、うなりもせず、檻に近寄ることもなく、ただただ無表情なままこちらを見つめるクマ。
私「外に出してもいいですか?」
職員「どうぞどうぞ」
抱っこして外に出し草の上に下ろす。感動も何もないクマ。
具合でも悪いのかと思い、
「いつもこんな感じですか?吐いたり下痢したりしていませんか?」
と聞いてみる。
職員「してないですよ。おとなしかですもんね」
クマを撫でながら「じゃ一緒に行こうか」と声をかける。
クマの素性を職員の方に聞いてみる。
○○という地区をウロウロしていたところ、警察に保護されていたらしい。
職員「飼い主からすぐ連絡があるだろうと思っとったとですよ。ばってんこの子は、電話1本、かかってこんだったもんね」
保護されている4匹のうち、1匹は完全な野良犬。1匹は噛み癖のある気の荒いコーギー。もう1匹は人懐っこい感じのパグ。
そして無表情なミニチュアダックスのクマ。
前者2匹は殺処分されたであろう。パグはパグレスキューという保護団体が引き取りにくるということだった。
私はクマ以外、ほかの犬には触れなかった。再び、重い扉は閉められ、外光が入ることのない完全な暗闇となった3匹の入った犬舎。中から鳴き声が聞こえてくる。
1匹だけ連れて帰ることの罪悪感。仕方がないのだから、と自分を正当化していた。人間って勝手なもんだなーと、自分の考え方に改めてそう思った。

旦那さんが綱を引き一緒に事務所まで。トコトコトコトコ歩くクマを見つめていたら、何だかとてもいとおしく思えた。
譲渡が決まったとき、記録用に飼い主とその犬を一緒に写真に撮るらしい。
「はい、写真撮ります」
とクマと一緒に写真を撮られた私たち。
私たちが飼うんじゃないんだけど・・・って顔して、二人で照れ笑いしながらクマを抱っこした。
「もし元の飼い主の人から電話あったら連絡します」と言われ、保健所をあとにした。
やっかいな病気を持っているかもしれないから、とそのまま病院に行き9種混合注射をしてもらい実家に戻った。
そして、ほかの犬たちの洗礼を受けることになったクマ。でも案外平気そう。今考えると、チョー緊張していたのだろう。仮面を、何枚をかぶりまくったクマは、慣れるにつれ、1枚、さらに1枚と仮面をはいでいき、少しずつ地を出していったクマだった。
私たちの「犬引取り」の任務は終わり、クマを実家に置き、次の日から4日間の水俣取材へと向かった。
車での移動中も食事中も、ことあるごとにクマの話ばかりの私たち。時間があれば実家に電話して「クマどうしてる?」何度も何度も。写メールまで頼んだり。
そんなとき妹から電話が入り、
「お姉ちゃん、今度のボランティアの会で、この子の里親を探そうと思うけどいい?」
との電話。
「ちょっと待って!」
私たちは水俣へ来て2日目にクマを飼うことを決心した。あの子と離れることは、もうできなくなってしまっていたようだ。引き取りに行くまでは、ただ頼まれたから行っただけなのに、私たちは運命的な出会いをしてしまった。(照)
水俣から戻り、クマを東京へ連れて帰るため、首輪やリードやケージなどを買い、そして大家さんや航空会社に電話したりとバタバタ。

※実は飼うと決めるまでは、毛が黒いのでクロと適当な名前で呼んでいた。クマは熊本からとった名前。決して見た目が熊っぽいからではない。

そんなこんなでクマとの生活が楽しくて仕方がない毎日。ロケのときはとっても心配だが、旦那さんや師匠や、師匠の奥さんや娘さんや事務所のスタッフ、みんなが可愛がってくれている。幸せなクマやねー。これからもっともっと一緒に楽しむばい。


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