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初めて水俣に潜ったとき その2

この海はずっと撮り続けるんだ!

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15分くらい泳ぐと恋路島が目の前に迫ってきた。

近くに迫るとかなり大きな島なのだということを実感する。埋め立て地から見る恋路島と、見え方が全く違う不思議な感覚だった。恋路島とはとてもロマンチックな名前だが、この名前の由来は若武者と妻との悲恋の伝説からついた名前と言われている。 

ようやく辿り着いた恋路島。目の前には、あの仕切り網につながったブイが見えている。そこで深呼吸をし、まわりの位置を確認する。ブイから視線を下に移動しながら私も海の中へ入っていった。
なんとそこは魚の群れで先が見えないほど。
なんという光景だろうか!
変な勘ぐりをして足を踏み入れたことに心から申し訳なく思う。
ここでは人間の勝手な考えとはまったく次元の違う時間が流れている。人間の犯した過ちを、海の生きものたちが回復へ向けて前へ前へと進んでいる。生きものの圧倒的な力強さを見せつけられた瞬間だった。
その海の中では、見知らぬ侵入者を警戒をしているのか、私の周りをぐるぐる回遊する魚たち。一瞬、歓迎されているような感覚に陥ってしまった。

そのまま網沿いに海底まで潜っていく。海底に着くまで、スズメダイをはじめとする魚の群れで壁ができるほどだった。そして岩の間を見ると、見たこともないような大きなアワビ、そしてクロダイやメジナが泳ぎまわり、興奮のあまり、水中で歓喜の声を上げていた。

浮上してすぐに「私、この海は絶対ずっと撮る!」と声高々に皆に告げたのをはっきりと覚えている。
これから毎週末、水俣に通い潜り続ける生活が始まった。

1995年10月のことだった。


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