水俣の職人

巨大籠を作る職人たち

九州では、日本最大級の実用竹籠である“イワシ籠”というものが存在する。日本で唯一1軒のみという、イワシ籠を作る職人4人は、10月頃から約5ヶ月間、水俣市の海沿いの作業場で、1個当たり700Kgにも及ぶイワシ籠を作っていく。長さ4.4m、高さと幅が2.6mという巨大な籠は、5ヶ月間のうちに約50個ほど作られている。カツオ漁の生餌となるカタクチイワシを入れるために使用するこの籠は、年々需要が減りつつある。またかなりの体力が必要となるため、後継者として名乗り出る者もなかなか現れない。職人達4人の平均年齢は70歳。明るく真面目に、そして真摯にイワシ籠を作られる姿は、彼らの生き方をも物語っているように見える。

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shokunin01.jpgまずは同じくらいの太さの竹を選んでいく

鹿児島・出水市の山から、孟宗竹を、伐り出していく。足場が悪いため、運び出すことが可能な場所から1本1本選んでいく。

shokunin02.jpg竹の根元を切り、ロープを使って運び出す

選んだ竹を電動ノコギリで切り、ロープを使い斜面まで引っ張っていく。この作業はかなりの重労働だ。

shokunin03.jpg伐り出した竹をクレーン車で作業場まで運ぶ

一度に伐り出す竹の量はは約200本。クレーン車を使い、トラックに積み込み、水俣市の作業場へ運ぶ。

shokunin04.jpg1本の竹を4つに割く

軸を使い、竹を4等分に割いていく。それから使う場所に合わせ、幅や長さを調節していく。

shokunin05.jpg親方の奥さん、文子さん

親方の奥さん、高橋文子さん。足を痛めているにもかかわらず、寒い海風吹きすさぶ中、作業を続ける。

shokunin06.jpg竹を割いていく様子

竹を割く作業は、どの作業よりも繊細な技術が必要となる。

shokunin07.jpg同じ長さ、幅に切った竹を、底の部分から編み込んでいく

まずは枠を作り、底となる部分から、割いた竹を1本ずつ編み込んでいく。籠1個に付き、24本ほどの孟宗竹を使う。

shokunin08.jpg底の部分が編み込まれ、いよいよ側面の作業

少しずつ輪郭を現すイワシ籠。4人で作業をすると、2日で1個の籠を作ることができる。。

shokunin09.jpg側面の編み込み作業

地道な作業を黙々とこなしていく職人たち。あうんの呼吸で、あれよあれよというまに籠の形になっていく。

shokunin10.jpg親方の高橋昭さん

親方の高橋昭さんは75歳。冬はイワシ籠を作り、春になるとお茶畑の手入れで大忙しだ。

shokunin11.jpg足場を作っての作業はまさに大工仕事

あまりに大きな籠なので、足場や脚立まで必要となってくる。

shokunin12.jpg大事な部分は針金で留めていく

イワシ籠を取り付けている船を「籠舟」と呼び、今では九州で数隻のみとなった。

shokunin13.jpgイワシ籠の内側からの作業

籠の中は光のこもれびがとても美しい。この光を利用して、水俣の湯の児温泉には、籠風呂なるものが登場した。

shokunin14.jpgほぼ完成したイワシ籠

ほぼ完成したイワシ籠。高橋さんが最後の手直しのため、籠の上に飛び乗ると、改めて籠の大きさが実感できる。

shokunin15.jpgイワシ籠を製作する海に面した作業場

海に面した作業場は、海からの風でとても寒い。強風のときは堤防を越えて作業場まで潮が当たる。

shokunin16.jpg完成したイワシ籠

一日の作業が終わり、出来上がった籠が夕陽に照らされる。 これらのイワシ籠が海で使われる日も間近だ。

shokunin17.jpgイワシ漁をしている漁場まで行き、籠にイワシを入れる様子

籠はイワシ漁をしている漁場まで籠舟に乗せられ、魚場に到着すると、海に降ろし、活きたイワシをそのまま籠へと移す。

shokunin18.jpgイワシ籠を引いて帰港

籠舟がイワシを入れた籠をゆっくり引いて帰港する。プラスチック製のものより竹素材の方がイワシにダメージが少ないと言う。

shokunin19.jpg生きたイワシを籠に入れ、いけすまで運んでいる様子

港近くに作られたいけすに籠で運んだイワシを入れ、数日間畜養する。その後、カツオの1本釣りの生餌として漁師が買い付けに来る。

shokunin20.jpg1年間使用した籠は、燃やされ、土へと還る

籠の寿命は1年間。新しい籠が出来上がる頃、使い古されたイワシ籠は燃やされ灰になり土へと還る。

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