水俣の海(1995~1997)

MINAMATA

水俣市は熊本県の最南端に位置する、海あり山あり川ありの 自然豊かなところにあります。水俣はかつて4大公害病のひとつ、チッソが水銀を海に垂れ流したことによって起きた「水俣病」で世界中に“みなまた”の名が知れわたることとなり、そこに住む人々はかなりの苦労をしいられました。
私がはじめて水俣の海に潜った当時は、“仕切り網”という汚染魚の拡散を防ぐための網が、4キロ以上にもわたり設置されていました。それは水俣病の象徴的存在でもありました。ここに発表する写真は、その仕切り網があった頃の写真です。人間の意に反して、網の存在は、小魚たちの隠れ家であったのかもしれません。生きものたちにとっての仕切り網の姿をどうぞご覧ください。

※作品には縦位置や6×6サイズも含まれますが、サムネイル一覧では横位置にトリミングされています。全体を表示するにはクリック(拡大します)してご覧ください。
M01.jpg仕切り網の向こうに見えるメバル

大きさ3センチ角の網の大きさから外を覗くと、メバルが数匹。網は魚礁の役割も果たしていた。

M02.jpg仕切り網をすり抜けるスズメダイ

汚染された魚の拡散を防ぐため、1974年に設置された仕切り網。網を器用にすりぬけるスズメダイの群れ。

M03.jpg仕切り網沿いに群れるスズメダイ

水俣湾に顔を沈めると、たくさんのスズメダイが目の前に群れ泳ぎ、まるで歓迎されているかのようだった。この瞬間を忘れることはない。

仕切り網に産み付けられたアオリイカの卵 差し替え.jpg仕切り網に産み付けられたアオリイカの卵

網に産み付けられたアオリイカの卵。海の生きものたちは、人間の思惑とは裏腹に、網を巧みに利用していた。

M05.jpg破れた仕切網

海藻が生い茂る季節、網をも突き破り、天へと進む海藻の力強さが感じられる。その力強さが水俣の海の生命力をうかがわせる。

006仕切り網にかかったカワハギ.jpg仕切り網にかかったカワハギ

尾びれを網に引っ掛け、バタバタともがいていたカワハギ。あまりに騒いでいたので少し手助けをすると、元気よく一目散に泳いでいった。

M07.jpg仕切り網にかかったダツ

回遊性のあるダツが網にかかっているシーンに出くわした。必死に泳いで抜け出そうとするが、体に食い込んだ網が取れる気配はない。次第に力尽きていった。

M08.jpg藻がびっしりとついた仕切り網

仕切り網は、さまざまな生きものが集う場所でもあった。春先頃、藻がびっしりと尽いた網は、生きものの出入りが厳しくなる。生きものは察知してか、姿はまったく見えない。

008いたるところに生息するキサンゴ.jpgいたるところに生息するキサンゴ

この場所は海底から真水が湧き出ている場所。一種独特の雰囲気の中、さまざまな生きものがひしめき生きている。

M10.jpgフトヤギの仲間(腔腸動物)

小さなポリプひとつひとつで、目に見えないほどのポリプを捕えるサンゴの仲間。以前見られなかったこのような生きものが、水俣でも見られるようになった。

M11.jpg湾内のサンゴ(キクメイシ)

ボートで水俣の漁師さんに連れてきてもらった場所。3~4メートルの浅いところに、キクメイシがいたるところに生息していた。

012スナイソギンチャク.jpgスナイソギンチャク

いたるところで見られるスナイソギンチャクやムラサキハナギンチャクなどの生きもの達が、海底をひときわ賑やかにしてくれる。

M12.jpg漂うミズクラゲ

流れのない海の中をゆっくり移動していくミズクラゲ。奥にはうっすらと仕切り網が見える。

M14.jpgヒトデに食ベられるミズクラゲ

漂いながら海底に落ちていくミズクラゲ。短い命を終えたミズクラゲは、ヒトデのえさとなり、ほかの生きものの命を育てる。

M15.jpg貝に食ベられるスズメダイの死骸

野性の世界の生きものたちは、生き抜くために必死だ。たとえ死んでしまっても、その死は決して無駄になることはない。

M16.jpgマダコ

擬態の名人マダコが、目の前を勢いよく泳ぎ去った。餌となるもの甲殻類や貝類が多いのか、水俣の海にはマダコがお多く見られる。

M17.jpgタツノオトシゴ

海藻や岩肌に擬態して、見つけることがなかなか困難なタツノオトシゴだが、この日は全部で4~5匹見つけることができた珍しい一日だった。

017ウミウシの交接.jpgウミウシの交接

同種のウミウシが同じ場所に何十匹と集まっていた。これは、交接のために集まったと見られ、港の堤防を鮮やかに彩っていた。

M19.jpgカサゴ

カサゴは水俣ではガラカブという。水俣でもよく見かける魚である。定期的に水銀濃度を調べられている魚種のひとつだ。

水俣差し替え分old.jpg缶の中に住むニジギンポ

フジツボをたくさんつけた缶から、そっと顔をのぞかせるギンポ。恐がりなのか、なかなか顔を出してくれなかった。

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